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真の聖人は批判の心を超越している。

彼らは、自分が称えられようが陰口をたたかれようが、決して意に介することはな
い。

大半の人々にとっては、自分たちの生きている時代の思想や偏見が、

生活全体をかたどっているほどに人の意見が大きなウェイトを占めているのだが、

真の賢人たちは他の意見に左右されることがまったくない。

自らの非利己主義を誇ることなく、

努力せずとも常に親切で憐れみ深いこの人たちは、死を克服しているようにみえる。

人間が「自我」と「非我」との間に境界線を引き、

何事も小さな自我に関連付けて考えている限りにおいて「時」という概念が

存在することを考えれば、

彼らは「永遠」であるといえよう。

そして、このような意味で「永遠」なのであるから、彼らは死を恐れない。

もっとも、彼らは安楽な生活ができるよう整えられた個人的天国というものを

信じていない。

とはいえ、この人たちは自分が独立した実体であることを完全に意識しており、

魂を放棄しているのでは決してない。

強い個性を保ちながら、人に対しては愛を行動に移すのだ。

そして、これこそが真の「涅槃」の境地なのである。

真の涅槃は、僧侶が勝手に創作した偽の涅槃とよく混同されている。

偽の涅槃は人生を捨て否定するが、

真の涅槃は人生から逃避したり、逆にそれに重きをおきすぎたりせず、

事物の霊化により人生を完全に花開かせる。

人が全てであり同時に無でもある境地が真の涅槃である。

それは、死を超越し、死の恐怖を超越している境地だ。

T.イリオン

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