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私たちの心は様々なものを追い求め、それを所有していますが、
たとえそれがどんなものであっても全ては死によって失われます。
なぜなら、死とは意識の中身が無になることだからです。

私たちは自分の得たものを、死後にまで持っていくことはできません。
物質的なものであれ、精神的な所有物であれ、または自分の人生を支えている何かであれ、
それらが永続するということはありえません。死が、その全てを消し去るからです。

別の言い方をすれば、死とは、「自分」の終わりです。
「自分」「自己」「私」と呼ばれるもの(その自己意識)の完全な終焉です。
「死」は、「私」の全てを終わらせるのです。
なぜなら、意識の中身が「私」「自己」「自分」というものを作り上げているからです。
意識の中身がなければ「私」も「自分」も「自己」もありません。

「死への恐れ」とは「意識の中身を失うことへの恐れ」、
つまり「自己を失うことへの恐れ」にほかなりません。

私たちは「自分」というものに依存し、それを保持し守るために生きています。
その「自分」というものは、様々な心の所有、意識の中身によって成り立っています。
私たちはその自己を成り立たせている心の所有を、心の支えを失うことを恐れ、
絶えず不安にさいなまれながら生きています。
その所有、その支えを失うことは、同時に「自分」を失うことだからです。

人間の不安の根源は、心と意識の中身の全てを失うこと、自分が失われること、
絶対的な無になってしまうことへの恐れとその衝動にあります。
そして「死」というものは、まさにその現実を私たちにもたらすのです。
だから私たちは死を恐れるのです。

死への恐れなく生きるためには、自己への執着を捨て切らなければなりません。
そうして初めて、死への恐れを超えることができるでしょう。

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