ドイツ神秘主義　マイスター・エックハルトの言葉10

「人が真に無欲の貧しさを持とうと思うならば、
その人は、いまだ自分が存在していなかったときにそうあったように、
自らの意志に囚われなくあらねばならない。
あなたが神の意志を満たそうとする意志を持ち、永遠と神とを求める欲求を持っている限り、
あなた方は決して貧しいことにはならないのである。
なぜならば、何も意志せず、何も求めない人だけが貧しき人だからである」

エックハルトの言う、

“その人は、いまだ自分が存在していなかったときにそうあったように、
自らの意志に囚われなくあらねばならない”

という言葉の意味はどういうものなのでしょうか。
それはいまだ自分が存在していなかったとき、つまりまだこの世に誕生しておらず、
体も名前も何もなかった生前の状態のときのことです。

その時あなたは、まだ存在を持たず、意志も欲も何もない状態でした。
というのも心と体がなければ意志も欲もないからです。
あなたは文字通り何もない「無」であり、完全に空っぽでした。

いまだあなたがこの世に存在していないとき、
あなたにはどんな意志も欲もなく、純然たる無の状態でした。
そのような完全な無の状態を、エックハルトは”真の貧しさ”と言っています。

そして新約聖書には、この有名な章句があります。

“心貧しき人は幸いなり”と。

つまりこれは、精神において完全に無欲である人のことを言っているのです。
生まれる前、完全に無私無欲で無意志だった時と同じように、
何一つ求めることも欲することもなく、神すらも求めることのない人、
そのような人こそ真に貧しき人であり、心囚われなくある人なのです。

無欲で心囚われなくある人というのは自由であり、
どんな努力も達成も求めることなく、ただ真理そのものを享受しています。
なぜなら、彼自身が真理そのものとなるからです。
大地に咲く、無私無欲の一輪の花のように。

真の幸福を知っている人は、心貧しき人だけです。

◇ディヴァイン・ソウル＆梵我蓮‐スピリチュアル・ユニバーシティ‐

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